人目も気にせず、あーん…と氷の塊を口に含み、美味しい筈が無いのだが美味しそうに食べる超マイペースなノア。
誰も何も質問していないのに、ノアはそのままぺらぺらと喋り続ける。
「…こう長生きしていると…ぶっちゃけた話、もう別に主人だけと話すとかいうこだわり…どうでもよくなりましてね。自分で言うのもなんですが、魔の者って物凄い根暗なんですよね。たった一度の人生…どうせなら馬鹿みたいな仏頂面じゃなくて素敵な笑顔の方がいいじゃないですか。…あ、言っておきますが、世間一般で知られる彼等と私を同一視しないでください。私、あんなに根暗じゃありませんから」
「………いや、何も聞いてないけど…」
…ノアが明るい理由とか、どうでも、いいんだけど。
何だか止む気配の無いノアの話を止めるべく、恐る恐る前に出て来たリストだったが………そのノアが、急に頭を抱えて小刻みに震え始めた。
…その豹変振りは、役者顔負けだと思う。
…片手で顔を覆い、プルプルと震える様はまるで悲しみに暮れるか弱い女性だったが、騙されるな。これはノアだ。
その場にいるほとんどの者が、ノアの独り芝居を冷めた目で眺めていたが…何を思ったのか、心配してしまったらしいレトが困り顔でノアに近寄っていった。
「…大丈夫?」
泣いているのか、と思い、レトがそっと覗き込んだ。
―――途端。
弾かれた様に、ノアは顔を上げた。
長い緑の髪が呼応して、大きく波打つ。
「―――…感動です…!」
ノアの予想外の台詞に………は?、と…一同は瞬きを繰り返した。


