亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



…と、魔の者…ノアは、再度にこりと人懐っこい笑みを浮かべてきた。

…レト達は、ノアにとっては侵入者でしかない筈だ。
城に来ても追い出される…それ以前に、入れてもらうことさえ叶わず、手厳しい歓迎とやらを受けるのかと覚悟していた分、少々苦労したが城に入れた事に一同は拍子抜けしていた。




…こちらが何者であるか、ノアには最初からお見通しだったらしいが。






「―――…貴方が…ノア?………歴代の…多くのデイファレト王の魔の者として…ずっと仕えていたっていう………あの…ノア?」

やや警戒しつつも、ゆっくりと立ち上がったユノが恐る恐るといった様子で尋ねれば、ノアは肩を竦めて見せた。

「ですから、ノアで御座いますとおっしゃっているではありませんか。ノアはノアだけです。ノア以外の何者でも御座いませんよ。ではサービスと称して念のため、もう一度だけ申します。ノアです。もう一度、ノアです」






「「「「………」」」」







…口を開けば一々意気揚々と話し、非常に余計な事まで話し出す…何ともテンションの高いノア。
………他の魔の者とは違いだいぶ性格が変わっている、とはイーオから聞いていたが…。




(………変わり者、過ぎる…)

…非常に、扱い辛い。絡み辛い。絡まなくてもあれはあちらから絡んでくるタイプだ。

俺の…最も苦手とするタイプの一つだ…と、密かに眉間にしわを寄せるリスト。
この時点で任務などほっぽりだして逃げたくて仕方ないが、ここはぐっと堪える。



…性格が、何だ。一応…ノアもあの生まれながらに寡黙で大人しい魔の者ではないか。
いくら変わり者のノアだって、生れつきの性質は変わらない筈…だ…。