亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~








―――魔の者…という生き物は、身体の造りや形は人間とよく似ているけれど、人間の部類には入らない。


人間に似た魔獣や聖獣もいるが、その獣類にも入らない。



獣よりも知能があり、人間の様に話し、人間の様に言語を使い、人間の様に振る舞う…人の姿の、異形の者達。




この世の全知全能の創造神アレスにより、世界の秩序を治める人間の最良の力となるべく生み出された彼等は、生まれながらに神が選んだ王という存在を敬愛し、唯一無二の我が主と崇める。

彼等は主である人間から片時も離れず、その強力な魔力をもって、時にはその身を挺してでも…命に代えてでも、主を守ろうとする。


主に対するその異常なまでの忠誠心は、彼等の宿命にして、彼等が生きる理由でもある。

その忠誠心とは、一体何なのだろうか。
生まれながらに持つ、この神が与えた主への忠誠心は、作られた偽りの心なのだろうか。それとも………純粋なる心なのだろうか。





生きた魔力の塊。人の形をした魔力の塊。人でも、獣でもない、彼等魔の者は………人知れず、己の存在とは何なのかと、自問自答を繰り返しているという。


寡黙な彼等は、他人にも、同胞にも、そして主にさえも…己の事は一切語らない。

………だから彼等は、独り自問自答する。
空を見上げて、或いは足元を見下ろして、或いは目を閉じて。















だから魔の者は、不可思議な者達であると言われる。

謎の多い、何を考えているのか分からない、不思議な生き物。
























…彼等は、不思議な生き物である。

彼等も、彼等自身が何者なのか分からないのだから。