その見えない力は全員を強引に城の中へと引っ張っていく。

訳が分からないまま、一同がそのままの勢いで中に転がり込むや否や…巨大な扉はその姿には似つかわしくない実に機敏な動きで、開けた口をあっという間に閉じた。

…隙間から伸びてきた何本ものエコーの腕が、未練がましくこちらを向いていたが、慈悲の欠片も持ち合わせていないらしい扉は、それらを無視して口を固く閉じた。



閉じた瞬間、ちぎれた腕が血肉を撒き散らして無造作に床に転がり落ちた。

……外からは、ガリガリと爪で扉を引っ掻く何とも不気味な音が物悲しく響いていた。
















「………」

砂利や積雪など一粒無い、大理石の冷たい床。
受け身も取れずにゴロゴロと転がり込んだ揚げ句、一同は団子状態となっていた。

転ぶ寸前で子供三人を下敷きにしない様にしたが、代わりに二人は頭やら腰やらを強打し、無言でその痛みに悶えていた。

両腕を突き、全員がよろよろと身体を起こし始めた時。















フードを外しながら、上半身を起こすべく、大理石に手を突いたレトの視界の隅に………エメラルドの光が流れ込んだ。


緩やかなカーブを描く、まるで波紋の様に光る緑の光………光?


…頭上から床に垂れるそれは…よく目を懲らして見れば、長い長い緑の髪の毛だった。

絹の川の如き光沢と直線を持つその髪を、レトはゆっくりと目で追った。

…高くなるレトの視線は長い髪を伝って上へ上へと上り、首を直角に曲げて頭上を見上げれば。




































「―――いらっしゃいませ、お客様」






















美しい緑の瞳が、綺麗な微笑を浮かべてレトを見下ろしていた。