扉の至近距離にまで来た二人は、同時に喉の奥で高低の周波を鳴らし、魔術を扉に叩き付けようとした。















ほら、こんなに近いのに。

この扉は開かない。








どうして開いてくれないの。







…開けてよ。















「………開けてよ」
















僕は、来たんだ。


言われた通り…来たんだ。















「…扉を、開けてよ…!」


















開けてよ。



開けて。


開けて。




開けて。














…開けろ。


























…ユノは、扉を睨み付けた。


美しい装飾が浮かぶ、しかし傷だらけの気高き扉を。




一向に開かぬ、その扉を。














僕は、来たんだ。

だから。



だから…。

















開けろ。






















「―――…扉を、開けろ!!ノア!!」








イブとリストが扉に向かって魔術を叩き付け、衝撃波を与えようと口を開いた。













―――…その、途端だった。




















穴を空ける筈だった目の前の扉が。


…唐突に、口を開いた。




「―――…っ!?」

「…ちょっ…!?」

舌の上まで出かかっていた魔術を、二人は慌てて飲み込んだ。



吹雪や風、冷たい空気までも吸い込むかの様に、一同を中へと引きずり込もうとする目に見えない奇妙な引力。