柱を伝って回り込んだエコー達が、道の先で荒々しい息をしながら待ち伏せする姿を眺め、レトは小さく首を傾げる。
「………鳥みたいに……羽が、あったら…簡単に飛び越せるのにね。………でも無理だから…………頑張って進むしかないや」
そう言って、レトは新たに腰の剣を抜いた。
………立ち止まるつもりは無い。衝突は避けられない。
前にいる何匹かを切って、それを踏み台にして行けばどうにか越えられるかもしれない。
これはちょっとした賭けだが。
「ユノ、まだ走れる?」
「君が引っ張ってくれるなら、問題無いさ」
「………………じゃあ、問題無いね」
お互い、一度も目を合わせぬまま言葉を交わした。
激しい揺れにも耐えながらなんとかレトにしがみつくドールは、恐ろしい呻き声と、足音ならぬひれ音が迫り来るこの緊張状態の最中……この王子様と狩人の二人の少年を見比べて、苦笑を浮かべた。
…本当………変な人達。
切り進むことを決めたレトは、待ち伏せするエコー達の壁まであと数メートル手前という所で右手の剣を構えた。
ユノも、その覚悟が出来ている様なのか、もう口を開く気配は無かった。
(―――…切って………切って…切って…切って……………切って…)
進む、のみ。
…グッと………繋いだユノの手と、剣を握る手に、レトは力を込めた。
…その、直後だった。
走る二人を挟む様に、右側と左側の両端に、何の音も無ければ気配も無く………風の如き速さのシルエットが、並んだ。
通り過ぎるか、もしくはそのまま襲い掛かってくるかと思われたそれら二者の影は…。
荷物でも運ぶかの様に、二人を強引に脇に抱えた。


