迫り来るエコーの群れとの距離が、少しずつ縮まってきている。
地面を蹴り、高く跳躍して頭上から襲い掛かってきたエコーに、レトは持ち替えたナイフを放った。
小さくとも速度と当たる場所によっては凶器と化すナイフは、醜いエコーの額に柄の部分まで深々と突き刺さり、エコー一体を背後に墜落させた。
一瞬で屍と化したエコーは勢いをそのままに落下し、何匹かの同胞らを下敷きにしたが、それはすぐに後から来る者達に踏み潰されていった。
数秒置きに跳躍し、頭上から襲い掛かって来るエコーの全てに、レトはナイフを投じ、剣を振るって一刀両断を繰り返した。………が、切れば切るほど、剣の切れ味が悪くなっている様な違和感を覚え、ふと長い刀身に目を移した。
………改めて見た剣は、酷く豹変していた。
切る前までは銀に光っていた筈の刃が、今は切ったエコーの黒い血液がべったりと付着し、空に糸を引いている。
刃物の鋭さなど、そこには微塵も無い。
…まだ何とか刃物として成り立ってはいるが、すぐにただの鈍器と化すだろう。
(………まずい…かな)
このままでは、追いつかれてしまう…と考えながら、レトはユノのすぐ脇から飛び出してきたエコーに剣を思い切り投げつけた。
両側に並ぶアーチ状の柱から柱へと、数匹のエコーの影が跳び移っているのが視界の隅に見えた。
頭上を移動するエコー達は徐々に増えていき…レト達を追い越していく。
………前に、回りこむ気だ。
前後左右が塞がれる。
「―――…結構、それなりに…知恵のある化け物じゃないか…執念深いしね。………どうするつもりだい、レト…」
…息を切らしたユノの声が、隣から聞こえる。
その声は疲れている様だが…恐怖は孕んでいなかった。


