そう言って、ドールはレトの首に回した両手に力を込めた。
フードの内からアルバスが顔を出したが、「今は引っ込んでなさい」という容赦無いドールの手によってアルバスは捩込まれた。
三人を囲む半透明なシルエットの群れが、地面を叩きながら、ズルズルと這いながら、その鋭い爪で凍てついた地面を削りながら………少しずつ、近寄ってくる。
下手に動けば、エコー達は一斉に襲い掛かって来るに違いない。
下手に動けば。
…では、逆に上手な動き方というものがあるのだろうか。
………あるのかもしれないけれど、生憎、思い付かない。
こうなれば、下手でも良いのかもしれない。
下手でも何でも、もうどうでもいい。
「………雪で霞んでよく見えないけれど……レト、君はこの先の奥にある城の扉が見えるかい?」
「………………うん。…大きい扉が見えるよ。凄く大きくて…青くて………綺麗だね…」
レトとユノは、繋いだ手に本の少しだけ…力を込めた。
吹雪で霞んだ城の姿を、ただじっと見詰める。
レトは空いている右手で剣を一本引き抜き、握り締めたまま、脇にぶらりと腕を垂れた。
「………だいぶ遠いね。…でも、実際の距離は見た目よりももっとあるんだろうね。今までの経験上、よく分かったよ」
「………遠いけど………………でも………………今は、僕達…見てる景色………もう全然違うね。………あんなに小さかったお城………今は、あんなに大きいよ………………近いね」
「………うん…近いね。………目の前にある。………そう………城は、目の前なんだ」
「前に行こう、レト」


