―――クスクス
―――クスクス
―――入って来た
―――入って来た
…上品な笑い声が響き渡るや否や、辺りからザバザバと水を叩く水音が飛び交う。
池からズルズルと白い目玉を光らせる半透明なものが、次々に腹ばいになって這い出て来た。
何処もかしこも、吹雪の中に不動の濁った白が浮かんでいる。
半透明な口が歪んで、笑っている。
笑った口の中の暗がりから、白く尖った歯が見える。
―――お客様 お客様
―――歓迎 歓迎 歓迎 歓迎
―――遊びましょ
―――遊びましょ
―――遊びましょ
―――皆仲良く遊びましょ
―――遊びましょうよ
目の前のエコーはクスクスと何処から発しているのか分からない笑い声を漏らし、その半透明な腕をユノに伸ばしてきた。
水で濡れ、ぬるぬるとしている細い指が、ゆらりとユノの顔に伸びていく。
ユノは強張ったままで動かず、ただ近づいてくるその奇妙な指を目で追っていた。
―――綺麗な目
―――綺麗な目
―――青くて澄み切っていて 綺麗な目
―――ちょうだい
―――ちょうだい
―――青い目ちょうだい
―――ちょうだ…
大きく見開かれたユノの目を掴み取ろうとする様に、一気にユノの左目へとエコーの手が伸びたその、瞬間。
濁ったエコーの乳白色の瞳は、陽光に似た輝きを持つ鋭い閃光を見た。
本の一瞬空を横切った光に思わず瞬きをし、再度その半透明な瞼を開けた直後。
肘から先が消えた自分の手が、そこにはあった。
鮮やかな切断面からは、間を置いて粘着質な黒い血液がドプッ…と溢れ出した。


