亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



…不可思議な行為をとるレトに、ドールは訝しげな表情を浮かべた。

「………何?…ぐずぐずしてるとあの王子様、見失うわよ…」

後頭部に直接ドールの声がぶつかってくるが、レトの意識はただ………城壁に、向いていた。













城壁。


城壁の、向こうから。



















…声が、聞こえた。


………雪の精とは違う、もっとはっきりとした…。









…………………………壁の向こうから、見られている。
















………そっと、レトは目を閉じた。

皆が見えない、聞こえないと言う精霊の気配が、何となくだが分かるレトは、精霊と会話もする。接し方を感覚で知っている。




だから………聞こえてきたこの声とは…。




























………まともに会話をしてはいけない、と本能で悟った。

「………何もいないよ」

城壁に向かって小さく囁くや否や、レトはユノの元へと走った。
ドールは訳が分からないまま…ただ背中で揺れるしか術が無かった。




































―――…何も無い?



―――何も無い。
―――何も無い。


―――何も無いものが、ある。いる。あった。いた。


―――何も無いがいた。


―――いらっしゃった。
―――いらっしゃった。

―――いらっしゃった。










―――お客様がいらっしゃった。
―――いらっしゃった。
―――いらっしゃった。









―――歓迎。歓迎。
















―――歓迎を。主様。