亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~










景色も空気も足場も悪い場所に潜り込み、久方振りの地上へと顔を出すまで…一体、どれほどの時間が経っていたのだろうか。


首を急角度に曲げて見上げた先にあるのは、さすがにあの薄暗い天井ではなかったが、遠い親戚なのではと思える様な同じくらい薄暗い雪空があった。

睫毛の先に、綿雪が腰を下ろす。
この小さな妖精の重さも、冷たさも、随分と久しく感じた。
踏み締める積雪の独特の音色は、お帰り、と歓迎されている様に聞こえた。


………帰ってきた、地上。

厚く積もった雪の海に吹雪と、変わらぬ世界が広がっている…かの様に見えたのは、錯覚だったのかもしれない。

何度辺りを見回しても、目で探しても、取り囲む景色は酷く…落ち着かなかった。


………真の銀世界とは、こういった景色のことなのだろうか。


















辺りは、白。本の少し灰色がかった空を背景にした、純白の景色が、ただただ、広がっていた。








(………木が…無い…)

泳ぐ視線の先は何処も、真っ白な針山の群集。
そびえ立つ木々の代わりに、この地は恐ろしく尖った柱が根を張っている。
常日頃、身近にある筈のあの温かみのある木が、無い。

生命の息吹を感じない。ここは、静か過ぎる。何もかも息をしていない。………死んでいる。
…それだけで、レトの身体はぶるりと震えた。

普通の動物が棲めない環境とは聞いていたが、ここはもう、空気からおかしい。






来る者全てを、拒んでいる。


そんな気さえ、してくる。


















こんなところに、人がいたのか。