「………何処か…行く宛てはあるの…?」
「…そんなもの…あるわけないでしょうが…」
「………お家は…?」
「…そんなものも無いわよ……」
「………バリアンには……帰るの………」
「………………………今更……帰ったって…」
「じゃあ、ドールも一緒に行こうよ」
…なんて、能天気な声が聞こえた途端、華奢で色白の手がドールの手を引っ張った。
細くて虚弱に見えてもそこはやはり狩人。人一人軽々と掴み、茫然とするドールをあっという間に背中に抱えてしまった。
「……首に腕を回した方が安定するから…」
「いや、そうじゃなくて…お、降ろしてよ!?なんであたしがあんた達に面倒を見てもらわないといけないのよ!!」
ハッと我に返ったドールは、レトの背中で喚きながら暴れ回る。
「……僕ね、おんぶって好きなんだ―…父さんも好きって言ってたよ。………おんぶをする方も、される方も………暖かいから…」
…ぼんやりとしながらそんなことを呟き、ドールの制止も聞かず………歩き出した。
それでも抵抗を続けるドールに、隣を歩くユノが実に爽やかな笑みで「諦めなよ」と肩を叩いてきた。
レトは無自覚だけど変なところで頑固だから、もうここは甘えちゃいなよ…と面白そうに笑いながら話すユノに怒りを覚えたが……ドールは大きな溜め息を吐いた。
………この身体では、自力で帰ることも出来ない。
この雪国で頼れる人間もいない。
…元々、捨て身の覚悟でやってきたのだ。後は野となれ山となれ…と思っていたが。
(………変なグループに介入しちゃったわね………あたし)
苦笑を浮かべ、ここはもう大人しく、この使えない身体を少年に預けることにした。


