亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

魔の者達は皆、緑の髪と美しい模様が入った瞳を持っているのだ。

ウルガの視線の先にいる子供も、その要素を全て取り込んだ容姿をさらけ出している。




………透き通った石が埋め込まれた杖を抱えて座り込む子供は、なんだかぼんやりとしながらウルガの方を見てきた。

………その魔の者は少女だった。

真っ白な肌に整った顔立ちの少女は、歩み寄って来るウルガを食い入る様に見詰めてくる。



………両者の視線が重なったまま、ウルガは歩み続ける。







宝石の如き緑の瞳に、自分が映っている。



………何を考えているのか分からない、読み取れない目。














その少女の前で、ウルガは突如足を止めた。



少女は臆すること無く、ウルガを見上げてくる。

………そんな少女に、ウルガは口を開いた。













「―――…ログ=マ=カステ様。……………………この様な所で何をなされているのですか。…王子の元にお戻りになったらどうです………」






………この国の王子に仕える、位の高い魔の者の少女………ログ=マ=カステ。




その辺の大臣よりも側近よりも身分の高いこの少女は、時折こんな所でぼんやりとしているのだ。




…………ウルガを見詰めるログの緑の目が、一度だけ瞬きをした。


………勿論、ウルガに返事などする筈も無く………………ログは無言で杖を立て、その場でゆっくりと立ち上がった。


……………そしてそのまま、踵を返してフラフラと歩いて行く。

「―――」

「………失礼致します」

小柄な背中に一度頭を下げ、ウルガは先を急いだ。