亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



「………長居は出来ないから………もう行こうか。……お城も近いなら…」

ギュッと手袋を嵌め、何本もの剣をクルクルと手元で回転させて腰のベルトに収めた。

アルバスが潜り込んでいるにも関わらずフードを被ると、小さな嘴が襟元から現れた。
素直に立ち上がろうとするユノの手を引いた後…レトはゆっくりと、ドールに目を移した。



彼女は相変わらず壁に寄り掛かり、気怠そうに足を前に投げ出している。レトの視線に気付いているのかいないのか…強気な瞳は一向にこちらに向かない。







「……………………ドール…は…」

「さっさと行きなさい。時間が無いわよ」

…レトの声は、直ぐさま彼女の一言で弾かれてしまった。
あっちに行けとばかりにヒラヒラと手を振り、深い溜め息を何度も吐いているが。………そんな仕草の一つ一つがわざとらしく見えてしまうのは、何故なのだろうか。


「………血も止まった、熱も下がった、身体はまだ動かせないけれど、これでも一応鍛えてるんだからすぐ回復するわ。………完全じゃないけれど、元気いっぱいよ。………あんた達は他人の事を気にする必要無いの!さっさと行けっ!」

未だ傍らでドールを見下ろしたまま動こうとしない二人に、苛立ちを孕んだ罵声を飛ばした。





レトはそっと彼女の前に回り込み、目線の高さを合わせるようにしゃがみ込んだ。
眼前には、むすっとした可愛くない仏頂面の少女が一人。
何ともまあ品の無い様子で、口の中に溜まる血と唾を、その辺に吐き捨てた。



………他人との交流を持たない狩人として生きてきたレトにとっては、ドールは初めてまともに話した女の子で、何もかもが分からない謎の生き物だ。

女の人の心はとても深くて、男には理解出来ないもの…と聞いていたから…ドールが何を考えてるか分からないけれど。


それでも少しだけ、分かるものがある。