レトの料理下手の発覚後、ようやく体調が整った頃になって、ドールが城までの距離はあと僅かであるという重大告知をしてきた。
「……ここに落ちる直前…一瞬だけど、確かに城が見えたわよ。…直線距離にして十キロも無いと思うわ」
…墜落の際の激しい風圧と吹雪に加え、半分意識を失っていたドールの視界。
冷たい風を舞台に舞い散る、細かな雪の結晶が絡まり合い、触れ合い、流れていく中の。
その、白い世界の奥。奥に…ドールは、凍てついた孤城の姿を見た。
雪国の、亡國の、孤城だ。
苦労して辿り着いて、結局は逃げ帰ってきたが………案外、近いのだな、と朧げな意識の中でドールは思った。
「…おまけに地上よりも遥かに歩きやすい地下通路なんだから、数時間かそこらで着くでしょうよ」
「…なるほど。………それにしても、バリアンはよく城の場所が分かったね。この国の民でも、地図と方位磁石…もしくは狩人の案内無しじゃ無理なのに…」
バリアンが何の地理の情報も無く、この地に入ってくるのはあまりにもおかしい。やはり地図か何かを持っていたのだろうか。
ユノがそう何気なく尋ねると、ドールは肩を竦めて見せた。
「………別に。案外簡単だったわ。………というのも、バリアンの老いぼれ王の配下には、デイファレト出身…ってやつもいるらしくてね。どんな奴か知らないけど、この雪国の地理はそいつのおかげで楽してるわけよ」
ふーん…と頷くユノに、傍らで佇んでいたレトが指先で突いた。
見上げれば、そこにはもう出立の準備が出来ているレトの姿。
足元でうろついていたアルバスはレトのマントを噛みながらちょっとずつ上昇し、最後にフードの中に潜り込んでいった。


