亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



うぅっ…と声を漏らして目元を押さえるユノの顔を覗き込めば…そこにはキラリと光るものがあった。

…自分が何をしでかしてしまったのか全く分かっていないレトは、心配そうにユノの肩を摩ってあげた。

「……大丈夫?………泣かないでユノ………」

「僕をこんなことで泣かせる事が出来る君は偉大だと思います」

ユノは涙を拭い、玉葱を切った訳でも無いのにつんとする目鼻や、盛大な胸焼けや、激しい頭痛や、痺れる舌や、一時的に知覚過敏になった全ての歯や凄まじい倦怠感……を、無視することにした。


一瞬で、不健康になった気がする。


…食した鳥肉は携帯食で、ずっと冷凍されていたため、消費期限の心配は無いのだが。


「…塩胡椒塗して焼いただけなのになぁ………」



…と、首を傾げるレトの証言を聞いたユノは…悟った。








どんなに良質な食材も、レトが手を掛ければ………毒となることを。







「…でもね、小さい頃一度作った時はね…父さん、褒めてくれたんだよ―……」


と、昔を語るレト。
…一度だけ、ザイが煮詰めていた獣のスープに、調味料を一抓み入れさせてもらったことがあるという。
その料理のザイの感想が、こうだ。








『…うん、美味いぞレト。よく出来たな。だからもう二度とお前は料理をするんじゃないぞ』





















「………ザイ…」


早く言ってくれよ、と嘆くユノの背中を、レトがまた摩った。


そんな二人に隠れる様に、今の一瞬で動かせる様になってしまった手で顔を覆うドール。
俯き、時折咳込みながら………なけなしの乙女心をまた、失っていた。






(………同世代の異性の前で吐いた…吐いた…吐いた…吐いた…吐いた…吐いた…吐いた…)