亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


狩人は皆、水分は雪を溶かして飲み水に変えている。水など、火を起こせる場所さえあればいつでも調達出来るのだ。

串代わりのナイフで乾燥した携帯食料の鳥肉を刺し、焚火の周りに並べていくレト。


…そんな彼の頭を、ユノは軽く叩いた。

「……ご…ご飯って…!?そりゃあ、お腹は空いてるよ?空いているけどさ!!…ただ、どんなタイミングなんだよこれ!?」

敵に遭遇してなかなかシリアスだったのに、どうして一瞬でクッキングタイム!?…と、頭を抱えるユノ。

そんな彼の心情など露知らず、レトはすっかり溶けて中身がお湯となったカップを手に取った。
そこで飲むのかと思いきや………そのまま、ドールの元に歩いてきた。

彼女の正面でしゃがみ込むと……カップと、指先でつまんだ黒い粒の様な物を目線の高さに持ってきた。


「……………解熱の効果がある…丸薬。………即効性があるから、結構効くんだ。………一人で飲める…?」

「…………………どういうつもりよ…あんた…」

…何故か、この狩人の少年は自分を助けようとしてくれているらしい。
どういう風の吹き回しなのだろうか。もうすぐ死に絶えるこの姿があまりにも哀れに見えたのか。


「……だって…もう敵じゃないんでしょ?………なら、もう君はただの女の人だよ。………女性はね、神聖なものだから……大事にしないといけないんだ…」

「………女性に優しいお国だこと…」

…呆れた、と言わんばかりにドールは溜め息を吐いた。
しかしドールは突き付けられたカップと丸薬に目をやり、ゆっくりと首を振る。




「………有り難いけど、遠慮しとくわ。というか、腕が動かないから無理ね。…それに、情けをかけて貰うほどあたしは…」

「やっぱり飲めない?じゃあ、ちょっと動かないでね」