亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



咳込むドールのすぐ傍に呑気なアルバスが近寄って来たが、彼女は辛うじで動く指先で面倒臭そうにシッシッと追い払った。

「………坊や達には言っておくけど……あたしはもう、あんた達の敵でも何でも無いからね。………そこの王子様を殺す理由も無いし………無関係。………あたしはもう関係無いのよ………あー…疲れた…」

そう言って、ドールは力無く首を垂れた。


…もう、どうでもいい。どうせ死ぬのだ。
どうせ帰れないのだ。
帰ったところで、遅すぎるのだ。



生きていく理由が無い。
夢が無い。
目標が無い。

もう、自分の支えだった父はいないのだから。







いっそのこと、もうここで殺してくれないだろうか。

敵方に見付かって…ちょうど良かった。


狩人ならば、一寸の狂いも無く首を撥ねてくれるだろう…。



















…そんなことを思いながら、ふと顔を上げたドール。
彼女の視界には…。




















何故か、焚火を起こそうと持参していた藁に火打ち石を近付けている…子供の狩人のしゃがんだ後ろ姿が見えた。

………あ?、と怪訝な表情を浮かべるドール。






「………ここでご飯食べようよ、ユノ。………あ、匂いが天井の穴から漏れちゃうね。………外の雪で塞ごうっと……」

…呆然とするユノとドールを傍目に、軽快な足取りで天井の穴を塞ぎに行くレト。







この狩人のガキ、今何て言った?

ここでご飯食べよう、とか言わなかった?

















天井を塞ぎ終え、大量の雪も一緒に抱えて帰ってきたレトは、その一部を荷袋から取り出した小さな金属製のカップに入れ、焚火の傍に置いた。