厚手の毛布で身体を覆った、何とも言えない、頼り無い小さな背中。
カクン…カクン…と、リズムよく傾いてはまた元に戻る頭は、奇妙な装飾を付けた短い白髪が覗いていた。
レトは無言でその後ろに近寄り、骨張った肩を掴んでそっと揺らした。
………夢の中なのか、この揺れでは老人は起きない。盛大ないびきが響き渡る。
「………」
レトは半開きの目でじっと背中を見詰め……………。
………………………………マンとの下から隠し持っていた小さな短剣を鞘ごと抜き、老人の耳元で……………………カチン、と音を立てて鞘を抜いた。
―――瞬間。
………小さな老人の身体はあっという間にレトの視界から消え失せ、実に俊敏な動きで積み上げられた荷物の後ろに滑り込んで行った。
……その、妙に滑稽な動きを目で追い終わると、レトは短剣をマンとの内に戻した。
「―――………僕だよ、コム爺」
積み荷の裏に消えた老人にそっと声を掛けると………。
…………数秒後、腐った果実の破片が飛来し、ベチャッ……と、レトの額に命中した。
「―――…………お前か………このガキめ………嫌な起こし方をする様になりおって……」
しわがれた声と共に、積み荷の影から頭を掻いている細い老人がヨボヨボと出て来た。
「………だってコム爺、起きないんだもの。………………コム爺こそ…嫌な物投げないでよ………」
額にベッタリと張り付いた、異臭漂う果実の皮を指先で摘む。
………酸っぱい臭いのする果汁が、眉間から頬へ流れ落ちてきた。
「………コム爺、いつからこの街にいるの?……お店、移動し過ぎだよ…」


