壁に寄り掛かって胡座をかき、頬杖を突いているドール。
よくよく目を凝らして見れば、彼女の茶色っ気のある赤髪は砂埃と雪塗れで、高く結われていた筈だが解けてしまっている。
マントも服もボロボロで、華奢な身体は切り傷と擦り傷だらけだった。
…特に目を引くのは、恐らく刃物による右太股の深い切り傷。
…自分で止血の処置をしたのだろう。血は止まっているが、それまでに流した血液がだいぶ多かった様だ。
強気のドールも今は血と体力が無いせいで、瞳の焦点も合っておらず、意識が途切れては直ぐさま起きるというのを繰り返している。
彼女の愛用の鎚は、そのすぐ傍らで元の小さな鎚となり、瓦礫と共に横たわっていた。
………もう、何もする気は無い…と言うより、何も出来ないらしいドールの真正面に二人は佇み、弱り切った彼女を見下ろした。
「………………君…あの時襲撃してきた…バリアンの…」
朧げな記憶を辿り、レトはようやくドールを思い出した。
対峙したあの時は靄で彼女の姿がよく見えなかったが、声や雰囲気で理解した。
勝手にこの雪国に侵入し、目茶苦茶に荒らし回って殺戮を繰り返す憎きバリアン。
そして彼女はそのバリアンの人間であり………ユノに致命傷を負わせた張本人でもある。
その事実を話すや否や、ユノは血相を変えてレトの背中に隠れた。
「……こ、こんな子供が…!?………レト、やっぱり危ないよ!!」
「………大丈夫だよ。…もう、身体動かないみたいだし………多分、このまま放っておいたら…」
………死ぬだろう。
高熱も出ている様だ。治療も自分だけの力では限界があるだろう。


