「―――………避けるんじゃないわよ……渾身の力振り絞ったっていうのに…………あー……駄目………もう駄目………腕上がんないわよ………」
…聞こえてきたのは、心底気怠そうな…少女の声だった。
同時に、ガチャン…と、重い金属が床を叩く音。
…ずっと鼻を突いていたこの血の臭いは、どうやら少女の流血らしい。
この血の臭いの散漫具合と、聞こえてくる息切れ状態の声からして……怪我をしている。それも、浅くは無い。
…なんだか少女の声に聞き覚えがあるレトは、つられる様に奥へと進もうとした。…が、待ったとばかりにその肩をユノが掴む。
「…な、何考えているのさ!…何ふらふらと近寄ろうとしてるのレト!…またさっきみたいな攻撃が来たら…」
どうする気だよ、と言いかけたユノの足元を………アルバスがテテテテ…と可愛いらしくかけていく。
…そういえば、さっきの地割れの際、この雛鳥は真後ろにいた筈だが、どうやって避けたのだろうか。
不思議と、無傷だ。
「………アルバスが近寄ってるから……多分、もう危険は無いよ。………何かあったら何とかするから」
…はっきり言って雛鳥は信用出来ないが、レトがそう言うならば…と、ユノは渋々頷いた。
…ゼェハァと苦しそうに息をするその少女の気配を辿って、二人はゆっくりと近寄った。
二人揃って汚れた怪鳥の羽を跳び越え、めくれあがった地盤に足を取られない様に進み、回り込んでみると………怪鳥の影に隠れる様に、少女は、いた。
「……あーら…御機嫌よう、王子様。………元気そうで…残念だわ」
暗闇の中で不敵に笑いながら、ドールは血の混じった唾を吐き捨てた。


