調理、と言うには相応しくないがその調理のほとんどはザイがやっていた。レト曰く、料理出来る、らしい。
「…乾燥させた鳥肉がね…確かあるんだよ。………後で焼いて食べようね」
鳥肉美味しいね―、と…真後ろで歌っているアルバスに語りかけるレトは、もしかしたら鬼かもしれない。
「腹ごしらえなんかいつでも出来るんだから。今は一刻も早くこの抜け道の向こうへ行かないと。………あのフェンネルの使いの二人が追って来ているかもしれないじゃないか」
…黙ってイーオの家から抜け出したのだ。ユノを捜しに来た連中なのだから、もしかしなくとも捜し回っているに違いない。
…追いつかれたら、拳骨の一発はお見舞いされるかもしれない。
「………うん…抜け道の話も一緒に聞いてたからね。………でも、凄く距離はあるし………すぐには追い付けないよ。…多分」
…あの二人がとてつもなく駿足ならば、話は別だが。
レトはちらりと何気なく背後を振り返り、すぐに前へ向き直った。
歩んできた道は真っ暗で、今から歩む先も真っ暗だ。
何も無い。
洞窟に吹き込んでいる様な風の音と、自分達の息遣いと単調な足音。そしてアルバスの音痴しか聞こえない。
他に存在感というものが…全く無い様に思える。
空気は相変わらず冷たいし、試しに鼻を利かせて臭っても…。
(………?)
途端、レトは不意に足を止めた。同じく立ち止まるユノは、怪訝な表情で暗がりの中の彼に目をやった。
「………レト、どうかしたのかい?…何か見える?」
そう言って道の先に目を凝らすユノに、レトは首を左右に振って………呟いた。
「………血の臭いがする」


