亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



過去、“目覚めの災い”は何度か起きている。

その度にデイファレト中の獣が我を失い、身体の大小構わず共食いをし、最終的には人のいる街へと襲い掛かってきた。
数多の人間が襲われ、食い散らかされ、老若男女の区別が付かぬ程、見るも無惨な地獄絵図が出来た…と、歴史書に記述がある。


手付かずの自然が国土の半分以上を占めるデイファレトだからこそ、この災いによる被害は大きい。
未踏の雪山には、まだ知られていない獰猛な獣も数多く棲息しており、それらが襲撃してきても街の民は対処仕切れない。



「………恐らく、災いは戦士の月が昇る少し前くらいに…本格的に効果を増すでしょうね。…新しい王様が誕生する前に………街は、狂った獣で満たされるわ…」




………そうなると、もうどうしようもない。
避難しようにも、イーオは車椅子である。他人の手助けが無ければ、この小さな街からも出られない。





ユノという希望に満ちた王を見る前に、死を……歓迎せねばならない。
















「………明日の夜と迫っているわ。……悲惨な事になる前に、貴女は安全な場所に避難してちょうだい。………いえ、貴女の国に帰った方がよろしいわ。貴女のためにも。………この国の問題は、この国で解決しなければならないの」

…少しだけ沈鬱な表情で俯くイーオだったが。






その頭上からは、軽快な短い笑い声が降りてきた。…驚いて顔を上げたイーオの目前に………何とも高貴だが、不敵な笑みを浮かべるローアンがいた。









「…手助けは、要らぬと?」


マントを翻し、ローアンは踵を返した。
呆然とする背後のイーオに、ローアンは言葉を投げかける。