―――“目覚めの災い”。
それは、今回の創造神アレスが命じたデイファレトの王政復古で、明日の夜の戦士の月が昇る夜に新しいデイファレト王が生まれなかった場合………下される、天罰の事である。
「…その災いがどういったものか、お聞きしたい。いや………早急に教えて頂きたいのです」
サラサラと口から漏れる己の声はやけに冷静で、無感情なものだったが。
その反面、調子を狂わせる焦りというものが満ちていた。
…これは、一刻を、争う。
何故ならば。
「私の勘が正しければ…。……………………この災いとやら、既に始まっているでしょう?」
凛とした澄み切った声と共にイーオのみ一点に注がれた、高貴な瞳。
その目に映っていると思うだけで言い知れぬ震えが、全身を駆け巡る。
それはイーオも例外ではない。
(………懐かしい…空気)
かつて、これと同じ高貴なものの視線を自分は受けていた。
目の前の彼女は歳も性別も名前も外見も…見た目では何一つ違うのだけれど。
この、周りをも包み込んでしまう空気は………不思議と、同じ性質を持っているらしい。
イーオはローアンを見上げたまま喉の奥で小さく笑うと、幼い少女の様に首を傾げて、可愛いらしい笑みを見せた。
「…本当、フェンネルはいい王様が君臨したようね。………御名答よ、女王陛下様。………数日前からかしらねぇ?………何故か災いは始まっている様よ。まだ戦士の月も昇っていないのにおかしな話ね。………神様はせっかちなのかしら?」


