二人の姿が忽然と消えてしまったその場は、嘘の様に静かになった。疲労混じりに大きく息を吐き、ローアンは首を回して空を見上げた。
お世辞にも綺麗とは言えない、灰色がかった昼間の雪空。
銀世界を生み出す純白の小さな雪の群れは、地上へと向かうその足は遅いものの、休む気配は無い。
どんどん降ってくる。どんどん積もっていく。昨日も今日も明日もこの先も。途絶えることの無いその輪廻に、春の出る幕は無い。
………永遠の冬季とは、よく出来たものだ。
この雪は、どんなに見詰めていても見飽きることなど無いのに。
こんなに綺麗なのに。
…ぞっとする。
曲線を描く長い睫毛に引っ掛かった小さな雪の結晶をそのままに、ローアンは空を見上げたまま、結んでいた口を不意に開いた。
「―――…イーオ殿」
その声は、同じく空を見上げていた彼女の車椅子の背中に届いた。
間を置いて、その優しげな老婆の顔がローアンを振り返る。
「…あら、何かしら?…緑の国の、女王様」
「…お寒いとは思いますが……一つだけ。………貴女に、教えていただきたい」
ジンを三歩後ろに控えさせた状態で、ローアンはゆっくりとイーオに歩み寄った。
わざわざ前に回り込んで、イーオの目の前に佇むローアン。そんな彼女に、イーオは首を傾げた。
「………お喋りは、大好きなの。………何なりとどうぞ、綺麗な女王陛下様…」
愛想よく微笑むイーオに、ローアンもまた小さな微笑を返した。直ぐさま笑みを引っ込め、鋭い眼光へと変わる。
「………………“目覚めの災い”について、お聞きしたい」


