確かに。
今現在も尚、背中にしがみつかれたイブに苦戦を強いられ、揚げ句の果てには四の字固めで押さえられている…何とも情けない総団長のジン。
あの二人は紛れも無く、人間と、野獣フェーラ。性別云々の前に、種類から違う。
……そんな大きな違いがあるのだが、ローアンは二人を指差してけろりと述べる。
「だが、現にあれらは常識を超えてしっかりと通用しているじゃないか。人の色恋など千差万別。何でもありだ」
「陛下がおっしゃると、何でも正しく思えてくるから不思議です」
…更に聞けば、ジンがイブに恋慕しているという話は、城では誰もが知る公然の話であるという。………ジンの反応が分かりやす過ぎる故だ。…どうやら知らなかったのは、リストと想われているイブぐらいであるという。
…もう、どうでもいいや…と、リストは深い溜め息を吐いた。
「…いい加減解放してやらんと哀れだな。………イブ、遊びは止めてこっちに来い」
…そう、ローアンが言うや否や……音速や光速を軽く越えた速さで、満面の笑みを浮かべたイブがすぐ傍にまでやって来た。
ローアンのマントにしがみつき、癒しを感じているかの様なにやけた顔を寄せて、その温もりを堪能し始めた。
…一方、イブからの羽交い締めから解放されたジンは………………何事も無かったかの様に身体に付着した雪を掃い、無表情でこちらに歩んできた。
…切り替えの早い奴だな、とリストは心中で呟いた。
「………話を戻すぞ。ジンの説明であった様に…デイファレトの王子は、王になる前に重大な選択を迫られる。…その内容がどんなものであれ…我々としては、世界が無に帰す方を選んでもらっては困る」


