亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


その冷酷無慈悲なジンは、何故か、あのイブには頭が上がらない。

イブに会う度に身構えているのだ。イブもイブでそんな彼をからかうのが遊びの一つとなっている様で……視界の隅で静かな攻防戦を繰り返しているあの光景も、もはや見慣れたものだ。
ああいうジンの慌て振りを見るのは楽しいが、リストには不思議で仕方無い。

別に…女が苦手、という訳でもないらしいが。……猛獣使いである事に関係があるのだろうか?……フェーラが苦手とか。

怪訝な表情を浮かべて仕切りに首を傾げるリストに、ローアンはさらりとその疑問の答えを口にした。



「答えは簡単だ。ジンはイブに恋慕の情を抱いている」

「………へー、あの冷酷眼帯野郎も恋とかするんですねー………………って………はぁっ…!?」

驚きのあまり素っ頓狂な声を上げてしまったリストは、慌てて自分の口を塞いだ。……なんだか、頭が物凄く混乱している。ぐるぐるしている。気持ち悪い。いや、とにかく…。




そんな、馬鹿な。







「…陛下!…そういう冗談はきついですよ…!!………あ、すみません。陛下は冗談がお嫌いでしたよね、すみません睨まないで下さい。………じゃなくて!!…いや…ちょっと……軽い脳震盪が…」

予想していた範疇を平気でぶち破った衝撃的事実に頭を抱え、ふらふらとその場でしゃがみ込むリスト。頭の整理が、つかない。

「………いや、待って下さい!!ジンは16で、あのじゃじゃ馬はまだ13ですよね!?そりゃあ外見は13じゃありませんけど…!!」

「恋愛に年齢も性別も関係無いと思うが?」

「生き物の種類も通用するんですかそれ!?あそこにいるのは人間と野獣フェーラですけど!?」