「…こちらが昨夜、あの糞ジジイ…いえ、アレクセイから送られてきた文に御座います。陛下」
「はっきり言うくらいなら言い直すな。しかし糞ジジイとは少々口が悪いな、ジン。………そういうのは本人の前だけにしなさい」
「…御意」
祖父のアレクセイにだけは口も態度も悪いジンのこういった一面は既に公認のため、周りはさして気にしなかった。
ローアンは手にした文を開き、つらつらと並ぶその綺麗な書体の群れに再度目を走らせた。
傍らに佇むリストはジンを警戒しながら、ローアンの前に立つ。
「………それで…その、気になる情報とは…?」
「…先日、『守人』が占いを行った。これはその占いで出た結果。………………つまり、予知だ。……戦士の月が昇る夜、明日の夜がどうなるか………中々、興味深いだろう?」
遥か昔からフェンネルの城を守る、亡霊の様な形無き神の使い…『守人』。
フェンネルを守る守人は、白い法衣を纏った三人の老人の姿をしている。生きた魔力の塊、と言ってもいい。高い戦闘能力は持っていないものの、王の政の助言をしたり、創造神アレスの意思を伝える役割を持つ。
彼等の力で特に優れているのは、予知をする…占術である。
その守人の占いなのだから、信憑性はかなり高い。
薄っぺらい文を指先で摘んでヒラヒラと揺らしながら、ローアンは溜め息を吐いた。
「……ここに書いてある分かり辛い文章を簡単に要約すると、だ。…………………戦士の月が昇る夜………デイファレトには、なんとか新しい王が君臨するらしい。……………そして王が生まれた時に現れる光の柱、『祝福の光』だが………これが何故か、二本…とある」
「………二本…?」


