二人の間にそれ以上の会話は無いまま………一分かそこら経ったであろう頃。
松明の明かりとは違う、もっと眩しい光がうっすらと正面から差し込んで来た。
それはまるで、あまり見る事が出来ない貴重な太陽の黄金色に似ていた。
眩しそうに目を細めながら漏れ出る黄金色の世界へ踏み込むと…。
「……………わぁ…」
目の前に広がる光景に、レトは半開きの目を大きく見開き、驚嘆の声を漏らした。
そこは確かに、街。
人が溢れる、活気のある街。
―――…広大な洞穴の様な空間。
その中に、色とりどりな大中小の様々な家屋が所狭しと連なっていた。
中央には人込み溢れる幅の広い道があり、その両端に隙間無く並ぶ商人の店。
文字の読み書きが出来ないレトには、店先に出された板に刻まれた文字が暗号の様にしか見えないが、堂々とさらけ出された売り物で何となくその店の種類が分かる。
あの煙たい店は煙草屋。
店の奥から小さな火花が散っているのは鍛冶屋。
店頭に保存食があるのは食物屋。
妙に店内が明るいのはランプ屋。
檻に入った鳥や鼠がいるのは手紙などをあらゆる所に送る便り屋。
店は無いが、顔を隠してただ呆然と佇んでいる怪しげな人間は、多分………情報屋。
「………レト、よそ見をするな。しっかりと持て」
「………うん」
少しぼんやりと眺めていたレトはハッと我に帰り、尾を抱え直してザイと道の真ん中を歩き始めた。


