「………赤槍の誰とも連絡がつかないってのは……………どういう、ことだっ!!」










壁に向かって怒鳴り散らし、盛大に舌打ちをしながら、目の前の壁に拳を叩き付けた。

凄まじい衝撃をそのまま素直に受け取った壁に、幾筋もの亀裂と砂埃が生じる。
………同時に、この狭い空間自体が本の少しだけ揺れた。

「…物にあたるのは感心しないな。………一応言っておくが、ここは砂漠の真下だ。崩れて生き埋めになりたくないなら、大人しくしていろ」


この空間の中央。焚火を囲んで腰を下ろしている数人の人影の中で、男の行為に見兼ねたらしい深くフードを被った男がポツリと呟いた。

叩きつけた拳をゆっくりと下げ、再び舌打ちをする男…バリアンの反国家側の長の一人である『黒槍』は、親しい相棒である『白槍』の忠告を素直に聞き入れ、焚火を囲む輪の中に戻ってきた。

治まらない苛立ちを胸中に抱えたまま、自分の定位置に勢いよく座り込む。
…その隣に座っていた少女は、「…埃たつから、止めてよ…」と呟いて本の少しだけ距離を空けた。

「………誰も…誰とも、だぞ…。………連絡寄越せって何度言ったことか。…なのに、『鏡』には何も映りやしねぇ…。………無視もいいところだぜ…」



………昨夜から、現在長のいない赤槍の者達と連絡がとれていない。
…正しくは、伝わってはいるのだが、あちらからの連絡が一切無い。完全無視の状態を貫いていると言ってもいい。


「………連中は相当、頭にきてるんだろう。………昨夜の、あの鏡が映したもの。…無理も無い…俺だって腹が煮え繰り返りそうだったさ…」