遥か彼方の上空を見上げ、冷たい雪を払う様に瞬きを繰り返し………ユノは、満面の笑みを浮かべた。その笑みに、一切の迷いは無い。

















「………僕も、春が見たいから。…期日まで、もう時間が無い。一刻も早く…………………だから僕は、もう行くよ」




…他国の者の力など、借りない。必要無い。

それでは、意味が無いんだ。


自分自身の力で歩んでいくことが、この旅に必要な事。
たった、独り。

空を見上げていた顔を下げ、レトに再度向き直った直後…ギュッとマントを握り締めたレトが、叫んできた。











「―――…僕は、ユノを王様にしたい」






…言うや否や、レトは積雪を力強く踏み締めて駆け寄ってきた。
目を丸くして佇んでいるユノの目の前にまで来ると、普段は見せないぎこちない笑顔を向けてきた。








「………僕、平和とかよく分からないけど………………ユノを王様にしたい。王様になるユノが見たい」


………何の捻りも無い、素直な言葉。真正面から受け取ったその妙に嬉しさが込み上げてくる彼の言葉に、ユノは苦笑を浮かべた。








「…玉座まで、一緒に上る?」

「………うん!」

「じゃあ、決まりだ」



ユノは笑いながら、レトの頭に積もった雪を掃い、フードをしっかりと被せた。


夜気ですっかり冷え切っていた互いの手を、繋いだ。














「チチチッ」

















…風の音も何も聞こえない静かな夜。佇む二人の背後から、甲高く可愛いらしい鳴き声が聞こえた。

…二人してそちらに振り返れば………開いた窓から外に出てきたらしい、小さなアルバスが積雪の上にちょこんと立っていた。