亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



扉は独りでに、その大きな口をゆっくりと開いた。

……開ききった扉の向こうは、長い長い階段が遥か下方に続いている。
降りしきる外の雪が入り込もうとしたが、見えない壁に遮られたかの様に、一粒一粒跳ね返されていった。



「………証石が依頼主のと合致した様だ。……………そうでなくては困るがな。レト、尾を持て。………行くぞ」

パッとしゃがんでレトはカーネリアンの尾を抱えた。

二人は巨大な屍を持って、ザイを先頭に扉の向こうへ進んだ。


……扉を抜けた先は外と同様に極寒だったが、不思議と風一つ無かった。


薄暗い階段を慎重に降りて行くと、一定の間隔で備え付けてあった松明に、次々と青い炎が灯っていく。

………その不思議な光景を目の辺りにしながら、レトは前を歩く父に声を掛けた。

「………この街……他と違って変な造りだね。……………崖に扉を隠していたり…こんな階段があったり…………ややこしいよ」

「………何十年も前に造られた、街を守るための………まあ、要塞の一部の様なものだな。……………敵の目を欺く仕掛けだ。………昔…『緑の使い人』に造らせたらしい…」

………レトは首を傾げた。

「………その、『緑の使い人』って何なの?………コム爺(じい)の話でよく聞くけど」

「…………私もよく知らん。……………『魔の者』、とも呼ばれているらしい」