亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

「………レト、札をそれに結びなさい。……前にお前に預けた、半分に割れた獣の牙だ」

「………」

レトは一旦抱えていた尾を下ろし、ごそごそと厚手のマフラーを外した。
…緩んだマフラーの下からは、真っ白な細い首。その首に掛けていたのは、首飾りとなっている手の平に収まる位の小さな牙がキラリと光っていた。


これ?、と無言で見せると、ザイは軽く頷いた。

言われた通りに槍の柄から伸びる糸に首飾りを結び付け、クッと糸を引っ張ってから少し離れると………突き刺さっていた槍はズボッと抜けて声の主に引き上げられた。




「………札なんてあるんだね…この街………」

「………証石(あかしいし)という物でな。…………依頼を承諾した際に、契約を交わした証として貰う物だ。鉱石や骨もその類いに入る。………半分に割った証石の一方は依頼主が、もう一方は依頼を受けた側が所持し、会う時はその二つを重ね合わせて、互いを確認する。………盗難防止だ。金目当ての別人にまんまと中に入られて……殺された商人もいるからな。………証石もよくある方法だ」

「………ふーん………………………どっちかを無くしたらどうなるの?」

「…………………お前も私も……依頼主も困るな」

息子の素朴な疑問に、ザイは苦笑して言った。








―――その途端、地響きの様な…何かが軋む様な音が、正面の崖から鳴り響いた。






………汚れ一つ無い真っ白な壁に、直径一メートルの円がぼんやりと浮かび上がった。



…それは淡い青白い光りを放ち、フッと消えてしまった。


………が、その円があった場所に、美しい装飾が施された巨大な扉が突然現れた。