傍らに父が寄り添い、二人でその屍を見下ろした。
レトは拳を胸に当て、じっと見詰めながら呟いた。
「―――……生を受けた者として…生を狩る狩人として………全ての精に、命に、感謝します………」
短いお祈りを済ませると、父は自分の何倍もある巨体を、顔色一つ変えずに肩に背負った。
ズルズルと引き摺ってしまう長い尾は、後ろからレトが抱えた。
「………この先にある街まで急いで行く。また雪が降り出してきた…………獣が出るかもしれない。レト、後ろは任せたぞ」
「…うん、分かった」
数メートル後ろで、はーい、と可愛らしくレトは手を上げた。
………相変わらず眠そうな無表情の様な…悪く言えばヤル気のない顔だが。
巨大なカーネリアンを抱え、二人は雪の中を進み始めた。
冷たい小さな雪の結晶が、睫毛の先に引っ掛かる。
空を見上げると、綺麗な粉雪がさっきよりも足早に降りて来ていた。
………今日は吹雪になりそうだ。
深雪に足を取られない様に用心して歩きながら、レトは思った。


