亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



鎚の先の金属はゼオスの剣を受けると同時に、互いの間の空間を叩いた。


空間は波紋の様に広がり、ドールの鎚に重い空気圧の塊が加わる。
それによってドールの攻撃は通常の二、三倍の力を得るのだが。




……容赦無いゼオスの剣はいとも容易く、それら全てを薙ぎ払った。


衰えることを知らない大男の馬鹿力は、鎚諸共ドールを押し返した。

「―――っあ…!?」

一瞬、ハイネが自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。

小柄なドールの身体は勢いよく吹き飛び、小石の様に凍てついた地面を跳ねるところだったのを寸前で受け身をとって防いだ。

固い地面をごろごろと転がり、隅で縮こまっていたサラマンダーの巨体にぶつかった。

「…長!!」

「お前は自分の心配をしたらどうだ?」

…吹き飛ばされたドールの方へと駆け寄ろうとしたハイネの前を、厳つい剣が遮った。
そしてそのまま、刃はハイネに向かって地面と平行に振られる。






「…お前らの長は、捕らえられたその日に俺が切っていたのさ。死体を見世物にでもしようとしたが…使い道があるとか何とか、ケインツェル様がよく分からねぇ事をおっしゃってな。……結局死体は、今まで牢獄に放置したままだったが………どうしたものか、お前らは勝手に生きていると勘違いしていやがる…!…笑えたぜ!『鏡』とやらも、死体の傍を離れようとしねぇ!」



剣を弾き飛ばすや否や、ハイネの腹部に重い蹴りを入れた。
…減り込む足に、肋骨が折れたような感触が伝わってきた。



「―――…カッ…は…!?」

「ハイネ…!」


数メートル先の地面に叩き付けられ、どうと倒れるハイネを、ドールはよろよろと立ち上がりながら見ていた。

背後のサラマンダーは大きな羽根を動かし、奇声を上げる。