…俯いている…。
「………お前の親父を殺ったのは、俺だ」
―――……白骨の…死骸。
「―――あ……ぁ…ぁあああああああああ!!」
悲痛な叫び声に驚いた蝶がふわりと羽ばたいたと同時に、弾かれた様に、ドールは地を蹴っていた。
視界は透明な靄で酷く揺らいでいて、熱くて、冷たい空気がやけに…染みた。
燃え盛る闘志を露わにし、恐怖も不安も躊躇いも何もかも捨てて一気に襲来してきたドールに、ゼオスは口元を歪ませた。
この時を待っていたと言わんばかりの様子で力任せに剣を払い、ハイネを脇に押しやった。
向かい合う形となった両者の距離は、一気に縮まる。
ハイネが痛む腕で身体を起こし、振り返った途端、激しい衝突音が洞穴中を響き渡った。
12歳の小柄な少女が、およそニメートルの巨大な鎚を握り締めている姿は何とも不釣り合いで奇妙なものだが…その少女と大男が互いの武器で押し合っている光景は更におかしなものに思えた。
その重さも何の其のと、大きく振り回したドールの鎚と、片手で構えたゼオスの剣。
ギリギリギリ…と金切り声を漏らす殺意の塊は、どちらも引く気配が無い。
「………殺してやる……殺してやる殺してやる殺してやるっ…!!」
…止まる事を知らない涙を流しながら、まるで呪文の様に呟くドール。
目下に見えるその姿が、ゼオスは滑稽に思えて仕方なかった。
「………何泣いてんだよ…赤槍だ、長だ、と豪語していても、所詮はガキ。…泣き虫の小娘ってことか……フッ…笑えるぜ」
「………うるさいうるさい…うるさいっ…うるさいっ!!」


