亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



吹き抜けの窓からは熱風しか入ってこない。
日影に入っても、温度は大して変わらない。




ウルガは離れにある塔へと真直ぐ向かっていた。
すれ違う者達はそのピリピリとした威圧感に押され、目を逸らしながら通り過ぎて行く。
………いつものことだ。

ここの連中は皆、私を奇妙なものを見る様な目で見てくる。

…疎外されるのにはもう慣れた。



ビクビクとした視線、刺々しい視線を背中に感じながらウルガは歩いていると………。








廊下の奥で、吹き抜けの窓から漏れる陽光を避ける様に日影に座り込んでいる小さな人影を見つけた。



………自分よりも一回りも二回りも小さい。
…まだ子供だ。11、12位の幼い顔立ちをした子供。






………だが、普通の子供ではないことは、瞳に映した時点で明らかだった。





―――その容姿が、である。















腰まである長いストレートの髪、眠そうに半分だけ開かれた大きな瞳は………鮮やかな、緑色だ。



魔術師、魔法使い、占い師などの魔力を扱い、国に仕える者達のことを、この世界では『魔の者』と総称する。
姿形以外は人間とは違い、その寿命も造りも能力も、全て異質な者達。

彼等は創造神アレスの命により、その一生涯を国家の繁栄に捧げることが使命とされている、王族には絶対服従を課せられた者達。
………得体の知れない寡黙な彼等は、定まった主としか言葉を交わさない。