故郷に帰ろう。
こんな寒い国の土になるのは、御免だ。
また、皆に会いたい。
広大な砂漠を走って、オルディオの訳の分からない哲学を聞いて、白槍と黒槍の二人と笑いあって。
また。
また。
「………戻るわ。絶対に。………交渉、決裂よ。何が大長の命は助ける、よ。……大長は、あたしが必ず助けるわ。…もうどんな話にも乗ってやるものですか。あんた達の望み通り、あたし達はこの計画から抜けさせてもらうわね。せいぜい頑張りなさい!」
…ゼオスはバリアン兵士の中でもかなりの腕を持つ戦士だ。悔しいが、まともに戦っても勝ち目は無いと言ってもいい。
ここは、強行突破しかない。
あの大男のゼオスを、無事振り切れるだろうか。
一斉に行くわよ、とハイネに合図をしようとしたドールだったが……。
………何故か、ゼオス達バリアン兵士は皆、肩を震わせて笑い始めた。
何がおかしいのだろうか。
馬鹿にしている様な姿に、だんだんと苛立ちを覚えた。
中でも一際下品な笑い方をしていたゼオスは、不意に、何故か構えを解いた。
おかしくて仕方ないとでもいうかの様に、前屈みになって更に盛大に笑い飛ばしてくる。
…腹立たしいが…相手にしている暇は無い。
奇妙な違和感を感じながらも、今がチャンスであると、ドールはハイネに目で合図を送った。
…ハイネは小さく頷く。
奴の意識がこちらに集中していない今なら。
「…前から思っていたんだが………小娘、お前………何をおかしな事を言ってるんだ?………正真正銘の馬鹿だろう?」
…途端、行動に出ようとしていたドールの動きが、ピタリと止まった。


