『―――…要は、一網打尽という考えから目を逸らせばいいのですよ。雑魚の群れというのは、その先頭を行く彼らの頭が無ければ、雑魚の中のただの最悪な雑魚。統率力の無くなった群れは勝手に泳ぎ回り、小さな弾み一つで、簡単に網に掛かってしまうものなのですよ。……頭さえ群れから引き離せば、後はどうにでもなります。手間と時間はかかりますが……見物であることは間違いないですよ!…フフフフフフフ!!』
(……糞ったれが…!!)
怒りのあまり、ドールはその身を震わせた。
今回の計画を指揮していたあの側近の男……陰険眼鏡のケインツェルは、やはり陰湿で狡猾で……最低な男だった。
この、三槍の討伐を兼ねた計画。遠回りばかりのまどろっこしいものだが、正に一石二鳥の綿密な筋書きが綴られた計画だ。
…見事…ドールは手の中で踊らされていたわけである。今ここで自分が死ねば……バリアンに残してきた部下達はどう出るか。少なくとも、赤槍の皆には『鏡』を通して知れ渡ってしまう。
…血の気の多い連中ばかりだ。長である自分が無事に帰還出来るかは分からない。その事、十分頭に入れておきなさい…と言っておいたものの……怒りに身を任せ、我先にと突っ込んでいくやもしれない。
……白槍や黒槍、オルディオ等がなんとか抑えてくれればいいが。
「……あたしは…それなりの覚悟を決めて来たつもりよ。………死ぬかもしれないって…承知で来た。けれど………今のを聞いて、死のうにも死ねないわね。何が何でもあたしは、帰るわ…!」
生きて帰ればいい。それだけでいいのだ。それで、上手くいく。
敵の手の内にいるならば、可能な限り足掻いてやる。
何もかも狂わせてやる。
「……ハイネ、帰るわよ。…こんな寒い雪国はもう…おさらばといきましょう。………あたしはやっぱり、熱い砂と風が好きみたいだわ」
「……ええ…。あのクソ熱い太陽が恋しくて仕方ないですよ…」


