自分よりも一回りも二回りも大きな男。
この凍てつく寒さなど、男にとっては何の障害にもなっていないのか。
厚い防寒着など、どうやら無用らしい。
赤褐色の鍛え上げられた筋肉を晒した腕には、すらりと伸びる大きめの剣がしっかりと握られているのが見えた。
この、威圧感。
力で捩り伏せる事に長けた傲慢な態度と、挑戦的且つ好戦的な視線。腹立たしい口の聞き方に………並ならぬ、殺気。
楽しげな、殺気。
…大抵の者は、この男を前にすれば足が竦んでしまうだろう。
だがしかし、ドールはおくびれる事も無く…突き刺さるその視線を、気の強いその瞳で逆に突き返した。
鎚の柄を握り直し、ドールは憎々しげに………洞穴の前で立ち止まった男を睨み付けた。
「―――………ゼオス…!」
口にも出したくない、思い浮かべるのも億劫なその名を絞り出せば、ゼオスは口元を大きく歪めた。
「……おーや…存じて頂いているとは、光栄なことで…」
「…馬鹿を、言わないでちょうだい!………あんたみたいな下衆野郎………好きで覚えている訳なんか無いわ…!!」
…虫ずが走る。
老王に仕えるバリアン兵士はみんな嫌いだ。
大嫌いだ。
…中でも一番嫌いなのは……この図体のデカい男。
―――…ゼオス=ガナレア。
『バリアン国家赤の武人』の第一戦士の一人にして、長を務める男。
戦と殺しを好む残忍な男。
バリアンの戦好きな風格にはもってこいの兵士だ。
これまでにも何度か会ったことがあるが、最悪な印象は変わらない。


