亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



自分よりも一回りも二回りも大きな男。

この凍てつく寒さなど、男にとっては何の障害にもなっていないのか。
厚い防寒着など、どうやら無用らしい。
赤褐色の鍛え上げられた筋肉を晒した腕には、すらりと伸びる大きめの剣がしっかりと握られているのが見えた。




この、威圧感。




力で捩り伏せる事に長けた傲慢な態度と、挑戦的且つ好戦的な視線。腹立たしい口の聞き方に………並ならぬ、殺気。


楽しげな、殺気。















…大抵の者は、この男を前にすれば足が竦んでしまうだろう。

だがしかし、ドールはおくびれる事も無く…突き刺さるその視線を、気の強いその瞳で逆に突き返した。


鎚の柄を握り直し、ドールは憎々しげに………洞穴の前で立ち止まった男を睨み付けた。

















「―――………ゼオス…!」


口にも出したくない、思い浮かべるのも億劫なその名を絞り出せば、ゼオスは口元を大きく歪めた。







「……おーや…存じて頂いているとは、光栄なことで…」

「…馬鹿を、言わないでちょうだい!………あんたみたいな下衆野郎………好きで覚えている訳なんか無いわ…!!」


…虫ずが走る。





老王に仕えるバリアン兵士はみんな嫌いだ。
大嫌いだ。


…中でも一番嫌いなのは……この図体のデカい男。


―――…ゼオス=ガナレア。

『バリアン国家赤の武人』の第一戦士の一人にして、長を務める男。


戦と殺しを好む残忍な男。
バリアンの戦好きな風格にはもってこいの兵士だ。





これまでにも何度か会ったことがあるが、最悪な印象は変わらない。