様々な音が混じり合った騒音の中で。
…一際鼓膜を強く叩いたのは。
………低い、第三者の声音と。
ハイネの剣が弾き飛ばされた際に放たれた甲高い金属音の、二種が奏でる不協和音だった。
視界の端から、見知らぬ他人の刃が目にも止まらぬ速さで飛び込んできた。
咄嗟のハイネの構えも虚しく、その強烈な飛来物は彼の剣をいとも容易く巻き込み、そのまま岩壁へと突き刺さった。
宙に舞う刃こぼれによる破片が、その衝撃の強さを物語っている。
「―――…っ…!?」
予期せぬ衝撃が、ハイネの利き手に鈍痛と痺れを与えた。
吹っ飛んでいった自分の剣に目をやれば、鋭利な剣…バリアンの紋章が刻まれた他人の剣が、ハイネの刃を中央から貫いていた。
「―――…ハイネ…!」
咄嗟に駆け寄ろうとしたドールに、背中を向けたままのハイネが痺れる手を挙げて制した。
「…長…!………動いては、いけません…!」
…自分は大丈夫です、と続けるハイネだが、その声は何処か苦しげで、挙げられた腕は小刻みに震えていた。
………腕が、折れているいるのではないだろうか。
「…ハイネ…!あんた、何を言って…」
「…そいつの言う通りだ。………お嬢様ってのは、踵を揃えて大人しくしているもんだ………………ドール嬢」
笑みを含んだ、図太い男の声。
次第に近くなる声と共に、その声の主の姿も………吹雪に彩られたドールの視線の先で、輪郭が露わになってきた。
暗い雪空の向こうから歩み寄ってくる、数人の人影。
先頭を歩く影が大きく見えるのは、翻るマントのシルエットのせいではないだろう。


