今、何と言ったのだ。
怪訝な表情を浮かべて、ハイネは兵士の元へと歩み寄ろうとした。…その途端、兵士は弾かれた様にこちらに顔を向けた。フードの内から覗くその赤褐色の顔は…。
「終わりだ、と言ったのだ」
笑っているように、見えた。
「………終わり?」
「どういう意味だ…」
不敵な笑みを添えた兵士の言葉に、二人は半ば無意識に己の武器に手をかける。足を止めたハイネは兵士との距離を保ったまま、剣の柄を握りしめ、構えた。
ドールが握る鎚が、淡い光を放ったかと思えば、それはすぐに巨大な鎚へと変化した。本の少し動くだけで、先端の重い金属の塊が凍てついた地面を削っていく。
あからさまな敵意を剥き出しにする二人をただ眺めるのみの兵士は、悠々とマントを羽織り直し、改めて二人に向きなおり……一歩、一歩、後退していく。
せせら笑う兵士の姿が、少しずつ離れていく。
「そう、終わりだ。……お前達の役目は、終わりだ。…後の事は全て我々に任せておけ。なに、案ずるな。…貴様らの様な失態は、せぬ…」
「……何が言いたいんだよ、お前は…!」
役目が終わりとは、どういう意味なのか。意味深な言葉による困惑よりも、馬鹿にされた故の怒りの方が勝っていた。…ギッと奥歯を噛み締め、ハイネは剣を鞘から抜き放った。切っ先はすぐに、目前の兵士へと向けられる。
「…ハイネ…止めなさい…」
腹立たしいのは、ドールも同じだった。今すぐにでもこの鎚を振り回し、兵士の腹に叩き込んでやりたいのは山々なのだが。
(………変よ…)
…変。そう、変なのだ。……この状況といい、流れといい、豹変した兵士の態度といい……とにかく、今現在自分達を取り囲む、全てが。
全てが………何処か、おかしい。


