フードから漏れる髪は、鮮やかな光沢を放つ青みがかった銀色。
肩まである髪はウェーブがかかっている。
適当に目の辺りで切り揃えた前髪の下は………人形の様な、完璧なまでに美しい顔があった。
真っ白な肌に、長い睫毛。薄く開いた目は大きく、つぶらな瞳は底知れない深い紺色を帯びていた。
綺麗な瞳は、雪塗れの空を見上げたまま、ゆっくりと瞬きを繰り返す。
…………そして再び、少年は目を瞑ろうとした。
「―――…レト。そろそろ行くぞ」
………風の音も獣の遠吠えも、何一つ無かった無の世界に、低い男の声が響いた。
瞬間、レトと呼ばれた少年はパタリと天高く伸ばしていた両手を下ろし、トロンとした眠そうな目で背後に振り返った。
………別に眠い訳では無い。この目付きは生まれつきだ。
「………………父さん……今ね…………………生まれたばかりの雪の声を聞いていたんだよ……」
レトは深雪の中で立ち上がり、マントに積もった雪を振り払って、父である男の元に駆け寄った。
小さなレトを見下ろす父は、一回りも二回りも大きい、がっしりとした体付きの巨漢だった。
被ったフードからは、三十代位の凛々しい顔立ちの顔が見え隠れしていた。
「………そうか。………何と言っていた…?」
「………何も。…生まれたばかりだから、まだ言葉を知らないみたいだった」
「…………レト……頭の雪を払いなさい。…………髪が濡れるだろう……」
そう言って、手袋を填めた大きな手はレトの頭を撫で、フードをしっかりと被せてやった。


