はたして、聞こえているのだろうか。バリアン兵士はやはり黙ったまま、焚火に翳していた両手に革手袋を嵌めはじめた。
「………」
睨む二人と、素知らぬ顔の兵士。
両者の僅か数メートルの距離に、言い知れない奇妙な沈黙が漂う。
……そんな中で首をもたげたサラマンダーだけが…吹雪の舞う洞穴の口をじっと見詰めていた。
疲れ果てたつぶらな瞳が、闇色に染まった銀世界の向こうを見据えている。
その向こうの、曖昧な、輪郭を。
「………何故黙ってるの…」
「………おい…」
痺れを切らした二人の低い声が、兵士に向けられる。
同じ時、同じ場所にいるのに、この両者の間を隔てる見えない壁は何なのだろうか。
ドールは鎚を握る手に力を込め、その場でゆっくりと立ち上がった。
どうかするとそのまま殴り掛かりそうな勢いである。
「…無視か?………何のつもりだ…」
「………何か言ったらどうなの?作戦が遂行出来なかったことでお叱りでも受けたわけ?…………あんた…いい加減にしなさいよ…!………ふざけるのも大概に…!」
「―――…は……りだ」
…辛うじで鼓膜が捉えられるくらいの、小さな声。
開いているのか開いていないのか判別し辛い兵士の口から、ポツリと漏れ出た………低い声。
当然の事ながらその声は正確に聞き取れる筈もなく、吹雪の歌声にいとも容易く掻き消された。
…眉をひそめる二人の背後で、怪鳥だけが…瞬きを繰り返し、ぐっと首を伸ばした。
「……何だって…?」


