砂利の混じった雪を削りながら一歩前に踏み出し。
…ピタリと、立ち止まった。
ほぼ同時に、ドールとハイネは外に振り返った。ぐったりしていたサラマンダーもいつの間にやら頭を起こしている。
その場にいる全員の視線が注がれる、洞穴の口に見える真っ暗な雪景色。
闇に混じって細かな白色の粒がちらちらと見えるその、向こう。
…視界の真ん中に、ぼんやりと……人間らしき曖昧なシルエットが浮かんでいた。
ドールは鎚を握り締め、ハイネは剣の束に手を添える。
びりびりと張り詰めた二人の警戒心を知ってか知らずか……孤独な人影は、光を求めるかの様にゆっくりと吹雪を越えて歩んできた。
闇夜に隠れていた影は次第に焚火の明かりに照らされ………その姿を、曝しだした。
………それが誰であるか理解した二人は、ただ無言で、顔をしかめるだけだった。
…湧いて出て来たかと思えば焚火の前で立ち止まり、平然とマントに積もった雪を掃い落とす男。
…このまま沈黙が続いていても埒が明かない、と…ハイネは実に不機嫌な様子で口を開いた。
「―――……合流、が…遅すぎるんじゃないのかい…。…集団行動が十八番の兵隊さんってのは………実は協調性の欠片も無い連中だったのかよ…」
「………」
苛立ちを孕ませた二人の鋭い視線を浴びながら………同じ潜伏班であるバリアン兵士は、何食わぬ顔でマントの汚れを掃っていた。
昼間の騒動が思い出される。
王族を待ち伏せし、一気に襲撃…という作戦。
王族の少年が玉座についてもいないのに白の魔術を扱えるという事は調査済みだった。
襲撃の最中わざと魔術を使わせ、空の魔石で大ダメージを与える。怯んだところを、仕留める…。
上手くいく筈だった、この作戦。
…予想外の部外者の乱入により、それは失敗となってしまったが。


