子孫代々使われてきた…本来は採掘のための鎚も、戦の武器と成り果ててしまっている。
魔力によって大きさも威力も巨大化する鎚は、決して人殺しの道具ではない。岩を砕き、地を削り、輝きを見つけ出すための、バリアンの民にとって最も親しみのある道具。
人を傷つけるだけの武器とは違う。国に富をもたらす人々の道具だったのに。
…ドールは、憎らしい王族に、その鎚を振るう。
民は国に従わないと叫ぶかの様に。
ドールが飼い馴らしている『鏡』は本体で、その分身はバリアンにいる仲間、そして今見詰めている父の元にある。
分身は基本的に誰も触れられないため、ドールが何かしない限り消える事はない。
『鏡』の分身は牢屋の壁にとまったまま…長い間、父の姿を映しているのだ。
(………もう少しだから…もう少しだけ待っていて……お父様………絶対に…)
絶対に、私が、助けて…。
「………助ける……から…」
…少女の小さな背中が、視界の隅で震えていた。
『鏡』を通して彼女の父…大長を見ていたらしいが………泣いているのだろうか。
…そんな事を思った直後、ドールは急にその場で立ち上がり、鼻を啜って「…寒いわ」と呟きながら、横たわるサラマンダーの元へ歩んで行った。
……強情、というか…意地っ張りというか…。
(…泣き顔くらい、見せたって恥ずかしくないのに…)
…心配をかけまいとする少女なりの気遣いに、ハイネは溜め息交じりに苦笑を浮かべた。


