亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

























―――…一面、純白の世界。



右を見ても、左を見ても、空を見上げても、下を見ても。



何処もかしこも、真っ白。



昼間だというのに、空に太陽は無い。あるのは分厚い分厚い雲の塊。
非常にゆっくりとした動きで、途切れない雲は流れて行く。
何処までも果てしない筈の空を、窮屈そうに。


………埃の様な白い粒が、フワリフワリと舞い降りる。


芸術とも呼べる美しい結晶が、仲間を連れて舞い降りる。






冷たい冷たい芸術が、閉じた瞼にそっと………腰掛けた。



真っ白な雪はあっという間に溶けて………消えてしまった。

























「………」


















―――柔らかい深雪の、何色にも染められていない真っ白なキャンパスの中央。


その中で少年は座り込み、目を閉じ……………降り出してきた雪の冷たさを、伸ばした両手と頬に、感じていた。








………あっという間にかじかんでいく、小さな細い指先。

元々真っ白な肌は更に白くなり…いつの間にか赤らんでいた。



小さな唇の上に舞い落ちた一粒の雪は、漏れ出る白い吐息で溶けた。





長い睫毛に引っ掛かった結晶が、瞼を開くと同時に、ハラハラと花びらの様に散った。


















白い世界で、白い世界を独り…静かに感じているのは、背丈も小さい、華奢な少年。

10、11くらいの幼い少年は、この極寒の世界に耐えれる様な、毛皮を加工した分厚い服を着ていた。