焚火に手を翳しても、ぎりぎりまで近寄っても、寒いものは寒かった。
広い洞窟は降りしきる吹雪を防いでくれるが、開いたままの口は冷たい風を容赦無く迎い入れる。
かまくらを作る要領で、洞窟の口を雪で塞いでしまおうかとも考えたが、口が大きすぎるため積もうにも時間が掛かる。
それに、長居はしない予定だった。
無理にでも身体を動かさないとあっという間に凍傷にかかりそうだ。
バリアンで生まれたこの身体は、寒さには滅法弱いということが今回の潜伏でよく分かった。
(…昼間も寒いが…夜は夜で最高に寒いな…)
こんな雪国に平然と暮らしている街の人間や狩人をある意味尊敬する…何て事をぼんやりと思いながら、ハイネは真っ赤な焚火の前でひたすら足踏みに励む。
…もうどれくらいこの単純な動きを繰り返しているだろうか。洞窟内にも入り込み、積もっていた足元の雪は足跡だらけの氷と化していた。
ずっと身体を動かしていないと、いつの間にか凍死していそうな気がする。
………寒い寒い死にそうだと呟くハイネだが、今一番この寒さに耐え兼ねているのは実は人間ではなく………サラマンダーである。
国を発つ際、防寒効果のある魔術をかけられた様だが……遠い異国故なのか、その魔術も効果が薄まり、当の昔に消え失せていた。
そして今…熱を媒体とする火の怪鳥サラマンダーの体力は限界だった。
動く気力も無いらしい怪鳥は洞窟の奥の方で横たわり、小さな焚火に照らされてぐったりとしている。
燃え盛る炎の翼も、今は風前の灯の様にチラチラと燻っていた。
…くたばるのも、時間の問題か。
サラマンダー無し、となると、移動手段は必然的に地道な徒歩となる。
それは…勘弁だ。


