亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



ローアンは老王から手を放し、睨み付けながらゆっくりと後退した。


………直後、アレクセイや使者達は、スッと構えを解いた。


「―――………言いたい事は言い終えました。…………我等は帰国致します…………………無礼極まりない行為、どうか御許し下さい。………………………………返事は、文で」

………呆然と立ち尽くす老王に軽く会釈し、ローアンは踵を返して扉に向かった。


閉ざされていた扉を、誰も何も言っていないのに兵士達が慌てて開け放った。

…敵意を込めて槍を突き付けながらも、一人もローアンに襲いかかろうとはしない。

カツカツと大理石にブーツを鳴らして、ローアンはマントを翻し、兵士の群れを真直ぐ進んだ。

アレクセイと使者達は黙ってその後に続き、トゥラはローアンの足元の影に滑り込んで消えた。





廊下の向こうへ………だんだんと小さくなって行く背中。

沈黙漂う長い廊下に、凛とした声が響き渡った。








「―――良い返事を御待ちしております。………………偉大なる、バリアン王」