ローアンは老王から手を放し、睨み付けながらゆっくりと後退した。
………直後、アレクセイや使者達は、スッと構えを解いた。
「―――………言いたい事は言い終えました。…………我等は帰国致します…………………無礼極まりない行為、どうか御許し下さい。………………………………返事は、文で」
………呆然と立ち尽くす老王に軽く会釈し、ローアンは踵を返して扉に向かった。
閉ざされていた扉を、誰も何も言っていないのに兵士達が慌てて開け放った。
…敵意を込めて槍を突き付けながらも、一人もローアンに襲いかかろうとはしない。
カツカツと大理石にブーツを鳴らして、ローアンはマントを翻し、兵士の群れを真直ぐ進んだ。
アレクセイと使者達は黙ってその後に続き、トゥラはローアンの足元の影に滑り込んで消えた。
廊下の向こうへ………だんだんと小さくなって行く背中。
沈黙漂う長い廊下に、凛とした声が響き渡った。
「―――良い返事を御待ちしております。………………偉大なる、バリアン王」


