亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


ローアンは睨み付けながら、そのまま老王に詰め寄った。

ヒッ…と声を漏らした老王の瞳に恐怖が浮かんだが、ローアンは構わず目の前にまで来た。

「―――王よ!!」

「―――女!!王から離れろ!!」

「…殺せ!殺してしまえ!!」



突然の事態に、周りは慌てふためいた。
敵意を露にした兵士達が、槍の刃先をローアンに向ける。


背後の使者達は警戒して身構え、アレクセイも四方八方に目をやる。
ローアンに近寄ろうとする兵士に、トゥラは牙をむき出しにして威嚇した。


………ケインツェルと二人の王子は、無言で事の成り行きを見守っていた。





ローアンは物凄い剣幕で、囲む兵士に向かって罵声を飛ばした。


「―――…貴様らは黙っていろ!!ギャーギャー喚くな!!……………私は、バリアン王と話しているのだ………!」


そう言って老王の胸倉を乱暴に掴み、グッと引き寄せた。………気絶しそうな怯えた目と、苛立つ鋭い目が、至近距離で視線を交える。


ローアンはそのまま、低い声で囁いた。


















「………………貴殿の国は、創造神アレスへの忠誠を誓う祭礼は行っていない様ですね……………………………………ならば……………神声塔で今何が起こっているか……………………………御存知ないのですか」



「―――…し…神声塔………?」




……占いなどの祭礼を行い、神の御告げを聞いていたという神声塔。


……もう長い間使われていない………廃墟同然の塔。


「…………………………そこに行けば、分かりますでしょう。…………………………………私はもう、この目で見ました。…………………世界の現状に、目を向けなされ」